第4回Brachypodiumワークショップ 講演要旨

単子葉植物におけるゲノム編集技術の課題と展望
遠藤 真咲 (生物研 ゲノム機能改変研究ユニット)

 人工制限酵素の改良や標的組み換え技術の向上により、高等植物においても任意の遺伝子改変が可能になりつつある。我々はイネを主な材料に、人工制限酵素を利用した遺伝子破壊や、標的組み換えによる塩基置換の挿入、トランスポゾンを利用して痕跡なく外来遺伝子をゲノム中から出し入れする技術の確立を試みている。本ワークショップでは、イネにおける実例を紹介するとともに、他の単子葉植物への応用の可能性について論じたい。

 
CRISPR/Cas9を用いたマウスゲノム編集
綾部 信哉(理研BRC 実験動物開発室)

 ES細胞を経ずに受精卵のレベルでより迅速に行うことが可能になった遺伝子改変マウス作出の実例から、マウスにおけるゲノム編集の現状やリソース提供機関としての取り組み、課題や臨床応用の可能性について紹介します。

 
遺伝子の効果をBrachypodiumを用いて調べる
芦苅 基行(名大 生物機能開発利用研究センター)

 植物のある生命現象を司る遺伝子を見いだした場合、その遺伝子は他の植物でも同じ現象を司っているのだろうか?特に作物ではどうだろう?この疑問に答えるのに適した植物の1つがBrachypodiumではなかろうか。Brachypodiumは作物に近く、栽培が容易で、ゲノムが解読されていて、かつ形質転換が可能なモデル植物である。今回、イネで見いだされた遺伝子の効果をBrachypodiumを用いて調べた検証例を紹介致します。

 
草本バイオマス研究へのBrachypodiumの活用と国際動向
持田 恵一(理研CSRS セルロース生産研究チーム)

 室内でも育成できるミナトカモジグサ(Brachypodium distachyon)は、イネ科草本植物の生産性を向上するための研究への利便性が高い。Brachypodium属には、異質倍数体のB. hybridum種もあり、2倍体種のB. distachyonに比べて顕著なバイオマスの増加や環境ストレスへの耐性を示す。本公演では、これらはBrachypodium属植物の比較オミックス解析から得られた知見について、また、ミナトカモジグサ研究の世界事情についても紹介する。

 
Brachypodium研究のリソース基盤整備
小林 正智・氷室 泰代(理研BRC 実験植物開発室・理研CSRS バイオマス研究基盤チーム)

 理研BRCではBrachypodiumのリソース基盤構築を目指し、リソース作出に必要となる形質転換等の技術開発を進めている。本講演では、形質転換に必須となるEmbryogenic cellの整備状況や技術研修などの取り組みを紹介するとともに、ゲノム編集技術の導入など今後の見通しについてもふれたい。

 
フェノーム解析基盤の整備
藤田 美紀(理研CSRS 機能開発研究グループ)

 理研CSRS機能開発研究グループでは、植物の環境応答に関わる重要因子の探索を行うために、生育環境を精密にコントロールし画像解析を自動で行う装置の開発を進めてきた。本講演では、装置開発までの経緯およびこれを利用したストレス評価系、およびフェノーム解析基盤としての今後の活用計画について紹介する。


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